
2025年10月から、大阪府の最低賃金が 1,177円 に引き上げられます。前年度比で+63円、引き上げ率は5.66%と、過去10年間でも大きな伸びです。人件費の増加は避けられず、特に中小企業にとっては採用・経営の両面で影響が出ることが予想されます。今回は全国の動きと大阪の特徴を整理し、企業に求められる対応を見ていきます。
・2025年10月16日から大阪府の最低賃金は1,177円に引き上げ(前年比+63円/引き上げ率5.66%)
・全国平均は1,118円(前年比+63円)となり、過去最大の引き上げ率(6%)を記録する見通し
・改定の影響を受ける大阪府内労働者は約38.9万人(全体の約3割)
・物価高や人手不足を背景に、今後も大幅な上昇が続く見込み
・中小企業は助成金の活用や業務効率化を進め、早めに対応策を整えることが必要
全国平均最低賃金の推移と2025年度の目安
全国の最低賃金はここ数年で大幅に引き上げられてきました。仮に中央最低賃金審議会の目安通りに各都道府県で引上げが行われた場合、2025年度の全国加重平均は1,118円、過去最大の63円アップ(引き上げ率6.0%)となる見通しです。これにより、政府目標「2025年をめどに全国平均時給1,000円超」を予定通り達成し、さらに「2030年代半ばまでに全国平均時給1,500円」に向けた施策が継続されます。
年度 | 全国加重平均額 | 前年度からの増額 | 引き上げ率 |
2022年度 | 961円 | +31円 | 3.3% |
2023年度 | 1,004円 | +43円 | 4.5% |
2024年度 | 1,055円 | +51円 | 5.1% |
2025年度(目安) | 1,118円 | +63円 | 6.0% |
※2024年度までは実績値、2025年度は中央最低賃金審議会の目安
※出典:厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
大阪府の最低賃金改定の詳細
大阪府の位置づけ
大阪府の最低賃金1,177円は、全国平均(1,118円)を59円上回り、東京都(1,226円)、神奈川(1,225円)に次ぐ全国3位の水準になる見通しです。新しい最低賃金額は、今後、各都道府県の審議会で正式に決定され、2025年10月以降順次適用される見込みです。
▼近隣府県との比較:
東京都: 1,226円(+49円差)
大阪府: 1,177円
兵庫県: 1,116円(-61円差)
京都府: 1,122円(-55円差)
長期的な上昇トレンド
過去の推移を見ても、大阪府の最低賃金はこの20年間で着実に上昇しています。この上昇トレンドは今後も続く見込みです。
▼ 大阪の最低賃金の推移
2004年度: 704円
2025年度: 1,177円
20年間の増加: +473円(約1.67倍)
影響を受ける労働者数
大阪労働局の試算によると、今回の改定で影響を受ける労働者は約38.9万人。これは大阪府内全労働者の約30%に相当し、多くの企業に直接的な影響を与える規模です。
※出典:大阪労働局
厚生労働省:令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
東京労働局 東京都最低賃金の63円引上げを答申
京都労働局 京都府最低賃金が時間額1,122円に ー京都地方最低賃金審議会が64円引上げの答申ー
兵庫労働局 兵庫県最低賃金 時間額1,116円を答申
最低賃金引き上げが続く3つの背景
長期化する物価高への対応
食料品価格や電気料金の上昇により、実質賃金の目減りを防ぐための賃金底上げが急務となっています。消費者物価指数は前年同月比で継続的に上昇しており、最低賃金の引き上げは生活防衛の側面が強くなっています。
春闘での賃上げムードと政府政策の連動
2025年春闘では大企業を中心に5%を超える賃上げが相次ぎました。政府の「2025年をめどに全国平均時給1,000円超」「2030年代半ばまでに全国平均時給1,500円」という目標とも連動し、毎年大幅な引き上げを続けています。
人手不足と雇用の質向上
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、最低賃金の引き上げは「働く場所としての魅力向上」「労働参加率の向上」を目的とした政策的な側面も持っています。
中小企業が今すぐ取り組むべき4つの対策
最低賃金の大幅な引き上げは、中小企業の経営に直接的なインパクトを与えます。人件費負担の増加に対応するため、企業が取るべき具体的な対策は以下の4つです。
① 助成金の早期活用
業務改善助成金やキャリアアップ助成金、IT導入補助金など、国や自治体の支援制度を積極的に活用することが第一歩です。助成金は申請期間や予算枠に限りがあるため、早めの準備が重要です。
② 業務効率化への投資
人件費増加に対応するには、生産性向上が欠かせません。具体的には、
・勤怠管理システムによるペーパーレス化
・RPAツールでの定型業務自動化
・クラウドサービスによる情報共有の効率化
・業務フローの見直しによる無駄の削減
といった取り組みで、長期的なコスト削減を実現できます。
③ 価格転嫁の交渉
取引先との信頼関係を前提に、コスト上昇分を価格に反映させる交渉も必要です。契約条件の見直しや適正な利益水準の確保は、企業の存続に直結します。
④ 採用戦略の多様化
最低賃金の上昇により「給与額」だけでの差別化は難しくなります。そこで、
・柔軟な働き方(時短勤務・リモート対応)
・福利厚生の充実(交通費全額支給・資格取得支援など)
・働きやすい職場環境(休憩スペース整備・コミュニケーション促進)
といった“給与以外の価値”を打ち出すことが、人材確保につながります。
※参照:大阪府の最低賃金および支援策について
まとめ
最低賃金の上昇は、確かに中小企業にとって大きなコスト増です。しかし見方を変えれば「人材確保や働きやすい職場づくりを進めるチャンス」でもあります。大阪府では全国平均を上回る1,177円となり、約38.9万人の労働者に影響が及ぶと試算されています。さらに、政府目標に沿って2030年代半ばまでは毎年3〜5%の引き上げが続く見通しです。
この変化を前向きに活かすには、助成金の活用や業務効率化、取引先との交渉、採用戦略の見直しなど、できることから一歩ずつ取り組むことが大切です。早めの対応が、結果的に企業の安定と成長につながります。
※本記事は2025年9月時点の情報です。最新の情報については厚生労働省または各都道府県労働局にご確認ください。
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